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2016年にスキーメーカー・ロシニョールに買収されたタイム。その2014年には創業者ローランド・カッタンが逝去し、娘さんが後を継いだと聞きます。 バイク開発を担当していたジャン・マルクも一線を退きました。ここ5年ほどはまさに激動の時代だったでしょう。売れ行きもロシニョールが満足したモノではなかったと聞きます。そしてロシニョールはフランスの新興企業ワッツフォーナウ(whatt for now)のFrançois Guersと売却合意をしました。
ワッツフォーナウはロシニョール、タイムと同じフランスを拠点とするEバイクを主力とする新興企業です。ワッツフォーナウはオーヴェルニュ・ローヌ・アルプス地域を中心としたサイクリンググループを作ることを目標にしているようです。その一環でタイムを手に入れたいうことでしょう。ロシニョールはタイムの翌年に買収したフェルトと自社ブランドのMTBに注力するということです。
ワッツフォーナウは本当に新しい企業で、2016年に開発をスタートしたばかりです。正直、私もまったく聞いたことがないメーカーです。どのようなバイクを作っているか本国サイトに見に行って見ました。
上からMTB、グラベルロード、シティコミューターです。
https://www.whattfornow.com/fr/
うん、まったく見たことありませんね(笑)。今主流のボッシュ、シマノのモータークランク&ダウンチューブバッテリー式とかリヤハブモーター&ダウンチューブバッテリー式とも異なる独特の形式です。強いて言えば一般車のヤマハやパナソニックに近い形式(クランクモーター×シートチューブバッテリー式)です。もちろんワッツフォーナウは異なるのですが。タイムの話題とはちょっと離れてしまいますが、面白いので触れておきます。
ワッツフォーナウのモーターアシスト機構は『ツイントランスミッション』という独特のものです。
BB部の上にモーターがあり、リヤハブの反ドライブ側(ディスクブレーキ側)にギヤを設けチェーン(?)で力を伝えるというユニークな形式を採用しています。TTXクロスカントリーというMTBでは190Nmという非常に強力なアシストを提供します。ロードですがドマーネ+HPは75Nmなので、どれほど強大か分かると思います。……多分多くの国の法律に引っかかる位のハイパワーです(笑)。
話を戻します。
タイムの事業はフレームとペダルが主です。そしてフランスだけでなく数年前からスロバキアでも生産が行われていますが、それらもすべて売却するそうです。本格的にワッツフォーナウの一員として動き出すのは夏。それまでは今までのチャンネルで販売を続けるそうです。
ついこの間タイムのことを話題に織り交ぜたばかりで、こんな事になって本当に驚きです。しかし今年の三月には、売却の他に再編と閉鎖も考えていたようなので良い方向に動いたと思いたいところです。
ここ数年、タイムがあまり元気がないような印象を持っていました。タイムが毎年モデルチェンジするような傾向ではないとはいえ、アルプデュエズ、サイロンの先があまり見えなかったのです。そういった意味では、フレームではありませんが、先日のシクロクロスペダルは新たな一歩にも見えて、ああ動き出すのかな? と安心もしたのです。それが今回は売却という形での変革になりました。正直、タイムを売るなんて私にとっては信じられない話です(笑)。ですが、ビジネスは高品質なものが必ず売れるというものでもありません。図らずもタイムカーボンバイクの前身、TVTがそれを物語っています。
地元企業への売却なので大丈夫だと思いますが、タイムが元気に市場に戻ってくることを祈って止みません。